FPS REPORT

第72期 2023年4月1日―2023年9月30日

トップインタビュー TOP INTERVIEW

社会そしてステークホルダーに新たな価値の提供を

代表取締役社長 堤 忠彦
代表取締役社長
堤 忠彦

 株主ならびに投資家の皆様には、平素より当社グループの事業運営に対して、深いご理解とご支援を賜り、厚くお礼申しあげます。

 2024年4月、建設業においても残業時間の上限規制を軸とする改正労働基準法の完全適用がスタートします。当社においては、2017年に発足させた「働き方改革推進委員会」の活動を通して検討・整備した様々な施策の成果を運用レベルに実装することになります。生産性を維持・向上させながら、現場、工場などの生産現場における長時間労働を解消し、ワークライフバランスを向上させて未来型産業への変革を図るという難しい課題への挑戦ですが、これを変化するための好機と捉えて取り組んでまいります。

 さて第72期は、VISION2030の3年目として手持ち工事500億円超をもってスタートしました。当社の主力事業である土木事業に関連しては、引き続き「防災・減災、国土強靭化のための5カ年加速化対策」による防災事業やインフラの老朽化対策市場が堅調に推移していますが、加えて今年6月に「改正国土強靭化基本法」が可決成立し、今後の事業の継続性に法的根拠が示されることになりました。しかし一方で、これらを背景とする潤沢な公共投資を効率的かつ合理的に執行するための方策のひとつとして、個々の工事の発注単位が容易に100億円を超える規模に大型化しています。これにともなう契約行為の複雑化から着工までに長い時間を要するなど、工事管理がこれまで以上に難しくなっており、工事採算性の管理において予断を許さない状況であることは認識すべき重要なポイントです。加えて昨年度からは、世界的なインフレが経済に大きな影響を与え、建設業では民間建築市場における供給環境に減速感が漂う傾向が見られました。これらによりVISION2030で示す数値目標に対してこの2年間の業績が下振れの状態で推移しているところですが、今後は円安効果も相まった観光業を中心とした経済の回復や住宅関連などの民間需要の高まりなどが予想されることから、市場の拡張や手持ち工事が順調に進捗することでの業績の回復、そしてVISION2030が目標とする業績目標カーブへの軌道回復が期待されるところです。

 VISION2030の達成においては、種々の環境整備も引き続き重要な要素です。新たな取り組みとして、人材の確保、育成の観点においては、生産現場のブランド力を高め生産現場で働く一人一人が「誇り・魅力・やりがい」を感じることができるようにするための「リ・ブランディング推進活動」をスタートさせました。加えて今年4月からは現場の業務支援を遠隔で行うバックオフィスをスタートしました。様々なかたちで生産支援を行うとともに、生産現場の居住、就業、教育・キャリアアップ(自己実現)の環境を整え、真に働くことの楽しさを感じることのできるようにして本質的な生産性の向上を目指します。また、九州小竹工場のリニューアルも2期目を迎え、すぐれた製品を効率的に生産するための未来型工場の誕生に向けて順調に新しい姿への変化を見せています。

 このように発注者様への価値、働く人々への価値、そして株主様をはじめとするステークホルダーの皆様への価値の提供など、時代の要請に応えながら進化を進め、関係の皆様への新たな価値の提供を通して、社会に必要とされる企業であり続けたいと考えています。今後とも何卒ご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。

業績・財務ハイライト PERFORMANCE
FINANCIAL HIGHLIGHTS

当第2四半期連結累計期間の経営成績につきましては、受注高は15,234百万円、売上高は11,877百万円となりました。損益につきましては、営業損失は176百万円、経常損失は178百万円、親会社株主に帰属する四半期純損失は90百万円となりました。

受注高

単位:百万円

  • 第2四半期
  • 下期

売上高

単位:百万円

  • 第2四半期
  • 下期

経常利益

単位:百万円

  • 第2四半期
  • 下期

親会社株主に帰属する
四半期(当期)純利益

単位:百万円

  • 第2四半期
  • 下期

総資産

単位:百万円

純資産

単位:百万円

※第70期第2四半期は個別ベースの数値であります。

連結損益計画書の概要

単位:百万円

科目 当第2四半期(累計)
(2023年4月1日から2023年9月30日まで)
売上高 11,877
 売上原価 10,472
売上総利益 1,405
 販売費及び一般管理費 1,581
営業利益又は営業損失(△) △176
経常利益又は経常損失(△) △178
親会社株主に帰属する四半期純利益又は
親会社株式に帰属する四半期純損失(△)
△90

連結貸借対照表の概要

単位:百万円

連結キャッシュ・フロー計算書の概要

単位:百万円

セグメント別概要

セグメント別
売上構成比

土木事業

宮崎自動車道(特定更新等)池島川橋(上り線)床版取替工事

現在、日本全国の高速道路で、大規模更新を中心としたリニューアル工事が進められています。最新技術を用いて再施工することにより、高速道路ネットワーク機能を今後も健全に保つための事業です。

当社では、塩害や輪荷重による経年劣化などで損傷が進んでいる宮崎自動車道池島川橋の床版取替工事を実施しました。当工事では、施工の効率化、床版厚・死荷重の抑制を目的として、当社が開発したあご付きスイングループ継手を用いたプレキャストPC床版が採用されました。

これまでの大規模更新事業において既設の床版をプレキャストPC床版に取り替える際、一般的にはループ継手が採用されておりますが、床版厚が厚くなり、死荷重が増加する傾向にありました。このループ鉄筋を斜めに配置することで、床版厚の低減を図ることを可能とし、開発に当たっては、静的曲げ載荷試験や輪荷重走行試験、施工試験を実施し、従来のループ継手と同等の耐力、疲労耐久性、施工性を保ちました。

今後も、品質向上や安心安全な供用に資する技術開発を進めるとともに、インフラ構造物の長寿命化に貢献してまいります。

▲ PC床版取替作業の様子

▲ 取替作業完了後

土木事業決算ハイライト
受注高 10,812百万円
売上高 8,945百万円
セグメント別利益
(売上総利益)
965百万円
受注高(単位:百万円)
売上高(単位:百万円)
セグメント利益(単位:百万円)

建築事業

品質と経済性にすぐれた建築製品を生み出す

主要都市部における都市再生開発事業の超高層マンションに採用されている当社開発のプレストレスト・コンクリート床版(FR板)は堅調に顧客を確保し、実績を増やしています。また、鋼板ダンパを用いた耐震補強工法のスマイルダンパフレームは、主に集合住宅を対象に営業活動を行い、受注拡大を目指しています。

※スマイルダンパフレームは、地震発生時に、鋼板ダンパが地震エネルギーを吸収するように設計された外付けの制震補強工法です。

建築事業決算ハイライト
受注高 4,156百万円
売上高 2,799百万円
セグメント別利益
(売上総利益)
360百万円
受注高(単位:百万円)
売上高(単位:百万円)
セグメント利益(単位:百万円)

中期経営計画の進捗について ABOUT THE PROGRESS
OF THE MEDIUM-TERM
MANAGEMENT PLAN

第5次中期経営計画「VISION2030」ー新たな成長戦略に向けた経営リソースの拡充

市場環境や生産環境の変化に対応するため、2021年度、「新たな成長戦略に向けた経営リソース(人材、技術・生産設備・財務)の拡充」をテーマとした、2021年度から2030年度までの10年間を対象とする第5次中期経営計画「VISION2030」を、策定いたしました。現在はVISIONの達成に向けて、各施策のKPIを策定するとともに、各部門のアクションプランの進捗管理を行っております。

第5次中期経営計画「VISION2030」

トピックス TOPICS

「富士ピー・エス版リ・ブランディング」の取り組みについて

建設業は、他の産業と比較して就業者の高齢化が著しく進行しており、若年層の入職者の確保や技術の継承が喫緊の課題と言われています。

国では有識者会議の提言により、建設現場で働く人々の「誇り」・「魅力」・「やりがい」の向上を図るため、建設業の既存ブランド再構築、新たなブランド構築を「リ・ブランディング」として、基本方針の策定や具体的な活動に取り組んでいます。

当社では、現場職員が個人レベルで充実感と満足感を得られる環境を整備することで、真に「誇り・魅力・やりがい」を感じ、こぞって現場勤務を希望する環境づくりをゴールとした「富士ピー・エス版 リ・ブランディング」に向けた取り組みを開始しました。

バックオフィスによる現場支援をスタート

建設業では2024年度から罰則付きで規定化される残業時間の上限規制への対応として、業界をあげて週休2日と時間外労働の削減に取り組んでいます。当社においては業界の取り組みに加えDXを推進して生産性向上と働き方改革を図ることで対応しており、その施策のひとつとしてバックオフィスの導入があります。これはITとコミュニケーションスキルを活用して工事現場を支援するもので、2022年度から準備を開始し2023年度に支援を開始しております。

健康経営の取り組みに関する外部評価について

2023年2月にスポーツ庁より「スポーツエールカンパニー」、10月に全国健康保険協会福岡支部より「健康づくり優良事業所ゴールド」に認定されました。当社は、社員がイキイキと能力を最大限に発揮することが企業の持続的な成長、ひいては経営理念に掲げた社会的使命を果たすことに繋がるとの考えから、代表取締役社長を最高責任者とした推進体制と、取締役会及び経営会議への定期的な報告体制を整備し、健康経営を推進しております。